「神 彌佐子の仕事」

神彌佐子の作品を語るうえで「日本画」であることを避けて通ることはできない。

しかし、昨今の類型的な日本画のイメージとはかけ離れていることも

作品に一度でも接したことがあれば誰でもがわかることだ。

通常の日本画では滅多に用いない刺激的な発色の絵具と伝統的な素材(墨や箔など)とが

和紙の上で錯綜し、反発と融合を繰り返すかのような独特な画面は、

絵具どうしが擦れあって燃え上がるようなエネルギーの発散さえ感じさせる。

しかしだからといって、単にエモーショナルで即興的な描写に依存しているわけでは決してなく、

むしろ極めて慎重で丁寧な素材との対話がそこには存在する。

一滴の絵具、一本の線さえ不用意に置かれた痕跡を画面から感じることはなく、

自らのテクニックと素材の持つ特性とをぎりぎり紙一重で調和させようとする

言わば心地よい緊迫感を私は彼女の作品から感じずにはいられないのだ。

そこにはもはや「日本画」という絵画領域にとどまることの意味すら感じさせない、

この作家自身の深い表現の真実性を私は目の当たりにしているのかもしれない。

佐藤美術館 学芸部長 立島 惠